しゃろむ! アイです
今回は、新しい試みとして、自分の興味に基づいて、イスラエルとは関係ないテーマについて書いてみようと思います。このブログは、今後私が学び研究していきたいなと思っている内容ですが、人によっては不快に感じる方もいるかもしれません。過激な表現や内容が含まれる可能性がありますので、どうぞご注意ください。加えて、今回は作品を熟読したのちという了承のもとネタバレありで進めていきますので、未読の方はまず作品をお読みください。
これはあくまで小説を自分勝手に分析し始めたものです。物語には何も関係ありません。
では、さっそく始めましょう。
**『殺戮に至る病』から考察する犯罪心理**
あらすじ・作品紹介
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。 東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。 犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。 冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
『殺戮に至る病』は、我孫子武丸先生の代表作。叙述トリックの名作で、ミステリ好きには必読の作品です。しかし、グロテスクな描写が多いので、苦手な方は注意が必要です。
この作品では、蒲生稔という男が猟奇的な殺人や屍姦を行います。物語は、母親である蒲生雅子と、被害者の友人である元刑事の樋口という三人の視点で進行します。独特な構成として、物語はまず稔が逮捕されるシーンを描くエピローグから始まり、その後、最初の事件の3か月前に時間を遡り、過程が詳しく描かれます。物語が進むにつれて、三人の時間の流れが少しずつ重なり、最終的にエピローグの場面で一つの結末を迎えます。
再読し、伏線も目に付くところを全部書き出した直後の、感想がこちらです!
見事に語彙力がどこかに飛んで行ってしまっていますねw
では、稔というキャラクターを犯罪心理学の観点から分析していきましょう。
稔の特徴
- 異常性
- 猟奇性
- 母親への異常な執着
- 精神的な幼さ
これらの要素は、彼自身の人格に大きく影響を与え、物語のトリックにも関連しています。また、これらの特徴は現実の犯罪心理学でも非常に興味深いテーマであり、多くの実例と関連しています。
これらの特徴をさらに詳しく見ていきたいと思います。
家庭環境と犯罪心理
父親不在の影響
蒲生稔の家庭環境は、犯罪心理学的に見て重要な要素を含んでいます。特に注目すべきは、父親の存在感の薄さです。小説中では、稔の父親は5年前に亡くなったと描かれていますが、それ以前の父親の役割についてはほとんど言及がありません。
この父親不在の状況は、家庭機能不全(Family Dysfunction)の一因となり得ます。父親が家庭における規範の提供者として機能しない場合、子どもは性役割や社会的役割に関するモデルを欠くことになります。稔の場合、この欠如が自己アイデンティティの形成に混乱をもたらし、後の異常行動につながった可能性が考えられます。
母親との異常な関係
稔と母親・容子との関係は、親子アタッチメント理論 (Attachment Theory)の観点から見て非常に不健全なのがわかるかと思います。稔は母親に対して異常な執着を作品序盤から示し、最終的には母親を殺害・死姦するという極端な行動に至ります。
この異常な母子関係は、不安定なアタッチメントの結果と考えられます。稔は母親に対して強い依存を示しながらも、同時に激しい攻撃性を向けています。これは、幼少期に形成された不安定なアタッチメントが、成人後も解消されずに残り、歪んだ形で表出したものと解釈できます。
性的発達の歪みと犯罪行動
歪んだ性的スクリプト
稔の性的嗜好と行動は、明らかに通常の範疇を逸脱しています。被害者を殺害し、死体を凌辱するという行為は、極度に歪んだ性的スクリプト (Sexual Script Theory)の存在を示唆しています。
この歪んだスクリプトの形成には、幼少期の性教育の不足や誤った性的経験が関与している可能性があります。稔の場合、母親に異常な執着を寄せていたうえでの両親の性的行動の目撃、またそれに伴い描写は少ないですが父親からの急激な拒絶が、性的対象の選択や性的行動のパターンに大きな影響を与えたと考えられます。
トラウマティック・ボンディングの影響
稔の母親への執着は、トラウマティック・ボンディング(Sexual Trauma and Traumatic Bonding)の一形態と見ることができます。母親との間に形成された異常な依存関係が、成人後も解消されずに残り、他の女性との健全な関係構築を妨げています。
この歪んだ愛着は、稔の犯罪行動にも反映されています。被害者を殺害し、その死体を凌辱する行為は、母親との分離不安や、理想化された母性像への渇望が極端な形で表出したものと解釈できます。また幼少期時点での異性と母親の結びつきの執拗さから女性の象徴とされる人体への損傷などといった行動も行うに至ったと考えられます。
社会的学習と犯罪行動の模倣
歪んだモデリング
稔の犯罪行動には、社会的学習理論で説明できる要素も含まれています。特に、母親との関係性が、他の女性との関係構築のモデルとなっている可能性が高いでしょう。
子供が生を受けて最初に体験する社会の中での機能が正常に稼働していない場合、そこで学び歪んだままの認識で成人してしまった稔は間違ったままに暴力性を発揮していくことになります。
犯罪心理学的考察
精神的未熟さと自己愛性パーソナリティ障害
この作品を叙述トリックの名作として成り立たせているものに稔の精神的未熟さが大きな役割を果たしていると私は考えます。一人称視点で進んでいく物語に読者誰もそれが43の大学教授の心情だと誰も気づけないほどに幼い。稔の行動には、著しい精神的未熟さが見られます。これは、家庭環境の影響を強く受けた結果と考えられます。特に、繰り返しにはなりますが父親不在と母親への過度の依存が、自己中心的な思考や感情調整の困難さをもたらしています。
また、稔の行動には自己愛性パーソナリティ障害の特徴も見られます。自身の欲求を最優先し、他者の感情や権利を無視する傾向は、この障害の典型的な症状です。やはりこの障害にも、家庭機能不全や不適切な養育環境が関与しています。
性的サディズムと死体愛好症
稔の犯罪行為には、性的サディズムと死体愛好症(ネクロフィリア)の要素が強く表れています。被害者を殺害し、その死体を凌辱する行為は、これらのパラフィリア(性嗜好異常)の典型的な表れです。
解離性同一性障害の可能性
小説の叙述トリックとして用いられている「稔=信一」の設定は、雅子の発言も加わり、読者の脳内に解離性同一性障害(多重人格障害)を想起させる部分もあると言えるでしょう。
ただし、今作では小説の技法として用いられているものであり、実際の解離性同一性障害とは異なる点に注意が必要です。
結論:『殺戮にいたる病』と現代社会
『殺戮にいたる病』は、極端な事例を通じて、現代社会における家庭の機能不全や性教育の問題を考えました。蒲生稔という異常犯罪者の心理を描くことで、我々の社会に潜む病理を少し覗けたと私は思います。
今回この文を書いていくうえで、家庭環境が個人の心理形成に与える影響の大きさを改めて認識しました。特に、父親不在や母子関係の歪みが、子どもの健全な成長にいかに重大な影響を及ぼすかなど。
また、性教育の重要性も強調されました。適切な性教育の欠如が、歪んだ性的スクリプトの形成や異常性癖の発現につながる可能性をかなり鮮烈に見た気がします。
『殺戮にいたる病』は、その衝撃的な内容ゆえに、読者に強い印象を与えます。しかし、その背後にある社会的・心理的問題に目を向けることで、もう一歩現代社会の抱える課題をより深く理解することができる気がします。
犯罪心理学的な視点から本作を読み解くことで、単なるホラー小説以上の深い洞察を得ると同時に、我々の社会がより健全で安全なものとなるために何が必要かを考えるきっかけにもなるかもしれません。
ただし最後にもう一度、これはあくまで小説を自分勝手に分析し始めたものです。物語には何も関係ないのでご注意ください。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。気分悪くなっちゃったかなw
これからもどうぞよろしくお願いします。
アイでした($・・)/~~~