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お弁当作り。それとよもやま話 - 鏡を磨いて ― 山花ひとりがたり

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 この間、お弁当作りを始めてみました。

 今までお昼ご飯と言えば、学食なり近くの料理屋に行ってお腹一杯食べまくる具合でしたが、いつもと比べて少量に、ご飯とお味噌汁という、きわめて簡素なものにしました。作ろうと思ったきっかけは、向田邦子 暮しの愉しみ』という本の中に、美味しそうな海苔弁が出てきて「これならウチにも作れるかも」と感じたことでした。

 海苔弁の作り方は極めて簡単。お弁当にご飯を薄く詰めたら、かつお節に醤油をまぶしたものを薄く敷き、適度に切った海苔を載せます。あとはこれを二回繰り返すだけです。

 本当に凝ったレシピというわけではないかもしれませんが、気軽に作れそうと思ったら無性に手を動かしてみたくなったのです。

向田邦子の愛した海苔弁と自前の味噌汁

 精神を病み気味な私は、それまで料理を含め家事がほとんど出来ませんでした。さっき述べたように、食事もほとんど外食でしたが、とにかく食べました。『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』という漫画に「至る」という言葉が出てきますが、まさにあの境地がやめられませんでした。活字が読めない、情景を想像するのもめんどくさい身にとっては何よりの娯楽でした。

 そんなある日——定期試験が終わり、アルバイトも休みの、本当に自由な日でした。無計画にお出かけして、思いっきり太陽を浴びた私は、今の暮らしを見つめなおしたいなとぼんやり考えました。そこからの私は早いもので、45Lのゴミ袋を買い込み、いざ溜まりきったゴミの山へ突進していき、何時間かの格闘の末、無事8袋とおさらばしました。やり切ったらお腹がすいたので、ご飯と味噌汁を簡単に作り、これを明日のお弁当にしたのです。

 

 私が海苔弁と昨日の味噌汁の残りをお弁当に選んだのは、「とにかく、かんたんなものに」したかったからです。ともすれば私は不安に駆られ、何事も完璧主義になりがちでした。料理一つとっても、一丁前の道具を使い、出汁や下処理にこだわり……そして、疲れ果てて、料理と引き換えに掃除も面倒なシンクが生まれるのです。なので、とにかく使う器具は最小限に、調理工程も最小限に心掛けました。

 

 こうして出来た、簡単な海苔弁は、はじめは黒かったかつお醤油もごはんとの相乗効果か綺麗な赤色に様変わりしたとても美味しそうな見た目に。ほどよいしょっぱさで、箸がどんどん進みました。なーんだ、こらなくても幸せじゃないか。

 

 完璧を求めるとまた投げ出すでしょう。「やれることを、やりたい範囲で」をモットーに疲れず愉しい暮らしを作りたいと思います。(了)


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